午睡は香を纏いて
「レジェスが特に、ね。オレもそれなりの怪我人だったのにさー、あんなでっかい半死人を抱えるハメになるとは、思わなかったよ」


思い出したくもないね、と付け加える。シルヴェーヌさんの言葉通り、酷い状態だったのだろう。
と、セルファが柔らかないつもの笑顔に変わった。


「まあでも、カサネのお蔭ですっかり元気になったわけだけどね」

「あたし? 何もしてないけど?」


あたしと出会った時には、既に元気だったしな、と首を傾げる。


「何でってそりゃ、ねえ、カイン?」


セルファがカインに視線をやると、カインは小さく鼻を鳴らした。


「あいつが単純だってことだ。
それより、オルガに帰る前にマダムと話をしておかないとな。情報交換をしておきたい」

「そうだね。トリスたちとも顔合わせしておいたほうがいいよね。今晩残ってもらう?」

「やり取りはトリスを介すことになるだろうから、それがいいだろう。
マダムには情報屋の伝手があると訊いたが、彼らにも会えるといいな」

「ああ、それってマダムの子飼いだから大丈夫だと思うよ」




いつの間にか話題が変わり、二人とも難しい顔をして打ち合わせを始めてしまった。
シルヴェーヌさんと手を組むというのは、あたしが思っていたよりも重要なことだったらしい。

よかった、と思いながら窓の向こうに視線をやった。
後は、あたしがどれだけサラの持っていた『何か』を引っ張り出せるかだ。
記憶でも、巫力でも、とにかく何か、サラの持っていたものを。
ガラスに映る、少し見慣れない自分の顔が、強張っていた。


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