午睡は香を纏いて
「こちらがゼユーダ国の巫女姫で、ユーマ様と仰います。この度は急な話でしたが、快く迎えてくださったこと、お礼を申し上げます。
ザリアム殿下からの書状です、お受け取りください」


すらすらとあたしの紹介を終えたカインが、恭しく大振りの封書を差し出した。紫色の蝋に、印がつかれているのが見て取れた。
もしかして、あれがカインの言っていた王族の紋章印付きの書状(多分、偽造)だろうか。バレたり、しないよね。

一瞬ひやりとしたが、公爵夫人は何事もない様子でそれを受け取った。


「確かに、頂きました。
では、巫女姫様にご紹介いたしますわね。サラの兄のヘラルドです」


後ろに立っていた男性があたしの前まで進み出て、すいと片膝をついた。手を取られたかと思えば、甲に微かに触れるだけの口付けを落とされた。


「ヘラルド・ルイ・ヘヴェナです。私にもパヴェヌのご加護を、巫女姫」

「よ、よろしく……」


こ、こんなことされたの、初めてだ。
しかも、王子様みたいな人に。

緩くウェーブのかかった柔らかそうな金髪に、キメの細かい肌。
ふわりと笑う様子は品がいい。
サラも、笑うとこんな感じだったのだろうか。

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