午睡は香を纏いて
「次に、この者を。当家の執事のタイラです。サラのことはタイラが一番知っておりますの。
サラについてお知りになりたい、ということでしたので、同席をお許しくださいませ」


二人の後ろにそっと控えていた老人が頭を下げた。


「パヴェヌの加護を、麗しき巫女姫」


乱れなく撫でつけられた白髪に、折り目の正しい黒服。深いシワの奥にある目は、どことなく鋭かった。
このおじいさんが、サラのことを一番知っている?


「どうぞお座りになって。ゆるりと話しましょう」


金と銀で刺繍の施された椅子に腰かける。あたしの横にカインが座り、セルファは警護するように真後ろに立った。
二人が近くにいることにほっとする。

と、タイミングを見計らったように数人のメイドが入ってきた。
お菓子や果物、お茶などが次々とテーブルに置かれる。
淹れ立てのお茶とタルトがサーブされて、目の前に置かれた。
メイドが下がるのを待ってから、さっそくですが、とカインが口火を切った。


「サラ様について、思い出話など聞かせて頂けますか?」


ちょうど、あたしの正面に座ったヘヴェナ公爵夫人が、深く頷いた。


「もちろんですわ」


あたしを見て、にっこりと笑う。それに答えるように笑いかけながら、背筋を伸ばした。
これから、何としても何かを手に入れなくてはいけないんだ。


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