午睡は香を纏いて
「神に仕える身となった以上、サラはわたくしの娘ではなく、神のものなのですわ。おいそれと会いになど行けませんでしょう」

「そうそう。修行の邪魔はできませんしね」


悪びれる風もなくあっさりと言って、サラに会いに行っていたというタイラさんに話を投げたが、そのタイラさんですら、大した思い出もないようだった。
巫女姫サラの神秘的な美しさと信仰心の強さを表すエピソードを一つ二つ、語っただけに終わった。

これなら、オルガの人たちのほうがよっぽどサラという人間を知っている。
娘なのに、妹なのに。家族なのに。

どうして。

ふ、と両親を思い出した。出て行った父に、帰らなくなった母。
あたしの両親も、こうなるのだろうか
いなくなったあたしをいつか、遠い人のことのように話すのだろうか。

サラがあたしになったというのなら、可哀想すぎる。
転生しても尚、家族に見放されてるなんて。


「……あら、巫女姫様、どうかなさいまして?」

「あ……っ、い、いえ」


驚いた声をかけられて、自分の頬に涙が伝っていることに気が付いた。
慌てて拭って、取り繕うように笑った。
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