午睡は香を纏いて
「目、目が痛くて、その」

「あら、いけませんわ。誰か、鏡を巫女様に」


公爵夫人が立ち上がって、人を呼んだ。少しの間も置かずに、あたしの前に銀細工の手鏡が用意された。


「す、すみません」

「どうかなさいましたか、ユーマ様」


赤らんだ目元を確認するあたしに、カインが訊いた。


「いえ、その。ただ……目が痛みました」


心が触れるなんて、できないよ。
そういう気持ちを込めてカインを見た。

カインだって、彼らから何かを引き出せるなんて思えなかったのだろう。
一瞬悲しそうに眉根を寄せたが、頷いた。


「そうですか。もう、よろしいのですか?」

「はい。あの、鏡をありがとうございました」


夫人の方へ、手鏡を差し出す。
と、一人の少女がおずおずと部屋に入ってくるのを視界の隅に捕えた。


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