午睡は香を纏いて
「……あの、お母様。私も少し、同席させて頂きたいのですけれど」


明るい赤毛が目を引くその子は、飾り気のない若葉色のドレスを纏っていた。
あたしと同じくらいの年だろうか。
くりくりとしたと大きな榛色の瞳が、そばかすが浮いた小麦色の肌と相まって活発そうな印象を受ける。
太陽の下がよく似合いそうなかわいらしい子だ。

しかし、その表情はどこか不安定で自信なさげだった。
お母様と呼んだということは、この子はサラの妹?


「あら、フィーナ。体調が優れないと言っていたでしょう?」

「そ、そうなんですけど、でも、巫女姫様にお会いしたくて……」


咎めるような夫人の言葉に、つっかえながら答える。やはり、大人しい子のようだ。


「そんな見苦しい状態で来るなんて、情けない。下がりなさい、フィーナ」


子爵が眉間にシワを寄せて不機嫌そうに言った。


「ごめんなさい。でも兄様、ご挨拶だけでも」


ぺこぺこと頭を下げている彼女に、夫人が仕方ないという様子でため息をついた。


「ここまで来て挨拶もしないのも失礼と言うもの。
巫女姫様、サラの妹のフィーナですわ。気の弱い子で、巫女姫様がお出でになるとなったら緊張したらしく、体調が悪いと臥せっておりましたの」


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