午睡は香を纏いて
「サ、ラ……?」

「なあに? それより、どうしてだかすごく眠いの。悪いけど、もう少し寝かせてよ、セルファ」


口をきくのも、笑うのもキツい。
眠りから起こした頭痛も影を潜めたせいか、体は再び休息を取ろうとしているようだった。瞼はもう開けていられなくて、あたしは再び眠りの世界に落ちようとした。


「サラ!? サラ!!」


ああ、うるさいなあ、もう。眠たいのに。揺らさないでよ。


「なによう、セルファ。寝かせてってば」


限界なのに、ゆさゆさと乱暴に揺らされて、文句を言おうとして目を開けた。
狼狽したセルファが再び視界に入ったが、それよりもあたしの目を引いたのは、隅っこで身を竦ませて立っていた女の子だった。

怯えたような顔でこちらを見ている赤毛の子。頬にちらばるそばかす。
見覚えがあった。随分昔に会ったことがあるような懐かしさを感じると同時に、涙が出た。


「あ……、あたし? じゃ、ない、フィーナ……?」


名前を呼んで、確信する。あの子はあたしの、妹だ。だって何もかも、あたしと一緒なんだもの。妹以外、考えられない。
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