午睡は香を纏いて
「あ、あの。私の姉様、と仰るんですか?」

「ふふ、そうよ? もう捨てた名だけど、サラ・ピエラ・ヘヴェナよ」


神殿入りする時、家名は捨て、ファーストネームだけになる。あたしが三つの時に捨てた正式な名は、多分家族しか知らない。
それでようやく、フィーナは分かってくれたらしい。大きな瞳から涙がぼろぼろっと零れた。


「ねえ、さま……」

「わあ、嬉しい。ずっとそう呼んでもらいたかった、んだあ……」


震えるか細い声で呼ばれ、充足感に満たされる。笑いを洩らしたところで、今度こそ眠りに落ちた。


「サラ!!」


遠くに小さく、声が聞こえた。

ごめん、セルファ。すごく眠たいの。

このまま、幸せな気持ちのまま眠らせてちょうだい……。


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