午睡は香を纏いて
――とくんとくん、と血が流れている。意識したことのなかった、あたしの中を巡る命の川。 
その赤い川の、何かが確実に変わった。封じ込まれていたものが解放され、流れに混じり合ったのだ。色味の違う二つの赤が、渦を巻いて一つの色に還っていく。
変質した血は体内を巡り、浸み込んでゆく。それはもうすぐ、指先や、髪の先にまで到達する。

とくんとくんと、ゆっくりと。


ほら、満ちた――。





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