午睡は香を纏いて
「起きて……。起きて……」

「…………ん」


優しい呼びかけが聞こえる。その声が、深い眠りの底にいたあたしを掬いあげるように、起こした。

そこは、ガタガタと揺れる、薄暗い空間だった。
あたしは膝を抱えて眠っていたようだ。体が酷く強張っている。


「ここ、どこ……え、なに、これ?」


動きにくさを訝しく思えば、両手足が荒縄で縛られていた。ぎちぎちと縄が食い込んでいる。


「よかった、起きてくれた」


狼狽えるあたしの頭の上から、声が降ってきた。


「え……、セルファ?」


振り返り見上げれば、驚くほど近くにセルファの顔があった。
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