午睡は香を纏いて
「え!? どういうこと、ていうか、何!?」


酷く狭い、息苦しさを覚える空間で、あたしはセルファに背後から抱きかかえられていた。セルファもあたしと同様に手足を縛られているのだが、その膝の間に嵌りこむようにして座っていたのだった。

どうしてこんなことになってるの!?

わたわたと動くと、セルファがあたしの体に回った腕に力を込めて、動きを封じた。


「静かに。君が気が付いたのがバレる」

「バ、バレる? どうなってるの?」


張りつめた声で囁かれ、声を潜めた。

混乱しつつ記憶を辿る。
あたしは確かヘヴェナ家の屋敷にいたはずだ。そして、急に具合が悪くなって、倒れた。
そこまでは覚えている。

それがどうしてこんな薄暗いところで眠っていたのだろう。
しかも、ガタガタと揺れているということは、これは乗り物の中?


「その前に確認することがある。君の名前は?」

「名前?」


冗談かと思うような質問だったが、セルファは真剣そのものだった。


< 289 / 324 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop