午睡は香を纏いて
「……!!」


ああもう。馬鹿なんだから。
お願い、早くしないとあたしは死んでしまう。

あいつは一体何をしてるの。こんなときはいつもあんたが仕切るのに。
さっくりとやって、逃げてよ。


「早く、してよ……、っ!?」


ああ、ダメだ。もうその時が来てしまったようだ。

もう、あたしは、死ぬ。

口が動かない。何も聞こえない。何も感じない。
ゆっくりと『あたし』が消えていく。

これから、どうなるんだろう。あたしの存在はどこへいくのだろう。
なんて、気にしてももう遅いのは分かっているけれど。
でも、出来ることならせめて、彼らに仇なす者に堕ちずにすみますように。


ああ。そうだ。言っておけばよかった。


最後に、あいつに、
    好きだったよ、って――。



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