午睡は香を纏いて
「ふうん、転生するとそんなことも忘れるんだな。
キャスリーってのはパヴェヌの元妻だ。神界きっての悪妻で、余りの行いにパヴェヌからは捨てられ、神界からも追放されたっていう女神。まあ、追放されたから廃神って呼ばれてるんだがな」


当たり前、といった口ぶりでシルヴァさんが説明してくれた。


「で、そのキャスリーが先読みの力を持っているんだ。
キャスリーは自分を捨てた元夫を恨んでいて、パヴェヌの治める地上に使いを放っては世を混乱させる。
その使いが、先読みというわけだ」

なるほど、と納得する一方で、ふと疑問が湧いた。


「でも、ブランカの大通りで店を開いてる占い師を見ました。あれは問題ないんですか?」


堂々と占いを行っていたけれど、あれは先読みとは言えないのだろうか。


「はっ。比べるべくもないな。
あんたの恋は上手くいかないだの、商売は繁盛しますだの言っただけで罪人扱いは、さすがに出来ないだろう。
適当なこと言って金毟ってんだから、そういう意味じゃ罪人かもしれないがな」


シルヴァさんが馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
そっか。セルファも『大したものじゃない』とか言ってたっけ。

しかし、シルヴァさんってシルヴェーヌさんのところで会った時と随分印象が違う。
言葉も乱雑な印象を受けるし、何より表情が豊かだ。


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