午睡は香を纏いて
「言おうと思っていた。すまない」

「いえ。私にはこのようなことしかできません」


そんな。このままだと、ライラの身が危うくなってしまうのに。
呆然と二人を見ていると、レジィはライラの頭をくしゃりと撫でて、


「リレトの手の者が来たら、逃げろ。捕まるな。
お前が逃げ切れなければ、カサネが危うくなるんだと思え。そして絶対、死ぬな」


と厳しい口調で言った。


「はい……ありがとうございます」


レジィの命令は、『生き残れ』、そう言っていた。
それは、あたしの安全とかじゃなく、ライラ本人の安全を命じたのだと、あたしにも分かった。
ライラは目の端に涙を滲ませて、深くレジィに頭を下げた。


「オルガまでの道のりに、障害がありませんように。パヴェヌのご加護がお二人の頭上にありますように」

「心配するな。俺には巫女姫がついてるんだ。それに、ユーマもきっと助けてくれるさ」


レジィの言葉に息を飲んだライラが、あたしの方に体を向けた。


「カサネ様、きっと私の弟がカサネ様の盾となり、御身をお守り致します。
レジェス様もいらっしゃいます。ご心配、いりません」


は、と自分の着ている服を見下ろした。そうか、これは、殺されたというライラの弟のものだったんだ。


「ライラ……ありがとう」

「ご無事をお祈りしております」

「長、支度整いました」


ゼフさんが飛び込むようにして入ってきた。


「お早く」

「おう。行くぞ、カサネ」

「あ、は、はいっ」


言うなり出て行ったレジィを急いで追う。
と、振り返って、見送ってくれているライラを見た。



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