午睡は香を纏いて
「ライラたち……、大丈夫かな」


見送ってくれたときの姿が甦る。
ライラも、ゼフさんも、無事だろうか。


「大丈夫だ。きっと」

 
そう言って、レジィも同じように空を仰いだ。


「心配すんな。きっとまた会えるからさ」

「ん……」

「さ、飯にしよう。これ、開けておいてくれ。俺はこいつらを繋いでくる」

 
黒毛の馬に載せていた麻袋を渡される。受け取ると、レジィは二頭の馬を引いて、手近な木に連れていった。

ライラは丸パンや干し肉、皮袋に入れた水を麻袋に詰めてくれていた。
あの短時間によく、と感謝するばかりだ。
 
袋の中身を広げていると、レジィが戻ってきた。
さっそく、パンに手を伸ばす。


「これさ、ライラが焼いたやつなんだ。旨いよな」

「え、そうなの? すごいな。あのスープもおいしかったし、ライラって料理上手だね」


向かい合って、のんびりとパンを咀嚼する。
この場面だけ見ていたら、ピクニックにでも来ているみたいだな、と思う。
でも、実際は追われているのだから、気は休まらない。
現に、景色を見るように遠くに視線をやったレジィの瞳の光は鋭いままだ。


「リレト、って人の追っ手、本当に来てるの?」

「ああ。間違いないだろうな。結構飛ばしたから追いつかれてはいないと思うけど、油断
はできないな」

「そっか」


もぐもぐと口を動かす。ゆっくりと会話ができるのは、あの小屋を出てから初めてのことだった。
今までの休憩は慌しく済ませて、話す余裕はなかったし、移動の最中は口を開けば舌を噛んでしまいそうで、無理だったのだ。

今なら、色々聞ける。




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