午睡は香を纏いて
「ねえ、レジィ。何であたしが狙われてるの?」

「ん? サラの生まれ変わりだから」

「いや、もっと具体的に」

「あー、そか。話さないと、カサネには意味不明なことばかりだよな」


パンと干し肉をあっさり胃に納めたレジィは、喉を鳴らして水を飲んだ。
ぺたんこになった皮袋を放って、ごろんと寝転ぶ。

それから空を見上げるようにしながら、ぽつぽつと語りだした。


「最初から話そうか。リレトってのは、禁忌の術を使って不老不死になった、神武官なんだ」

「ふろうふし?」

「ああ。老いない、死なないってやつなんだけど。その術はさ、禁忌っていうだけあって、たくさんの命を費やさないと、使えないんだ。
だからリレトは、神武官の立場を利用して、邑を一つ潰した。邑にいた奴らの命を奪って、禁術を己に使ったんだ」


不老不死、そんなことが本当にあるの?
淡々と話を続けるレジィの顔からは、感情が窺えない。


「その術を使うと、『命珠(めいじゅ)』っていう、命を司る珠が出来る。
その珠さえあれば、体が壊れても復元できる。命は永遠に潰えない。
心臓を貫いたとしても、死なないんだ。
その代わり、命珠を維持するためには、絶えず他の人間の命を捧げなくてはならない。
そんなフザけた代物を、リレトは作り出したんだ」


無意識に、服の下にある赤い珠を握り締めていた。
それの持つ色が、レジィの語る珠を連想させたのかもしれない。



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