午睡は香を纏いて
帰ろうとしたら、靴箱から靴が消えていた。
空っぽの靴箱をぼんやり眺めていると、
遠くから忍びやかな笑い声が聞こえた。
多分、あたしをターゲットにしている集団。
高校生にもなって、子供じみた嫌がらせをして、本当に楽しいんだろうか。
莉亜が言ってたっけ。
彼女たちは仲間を団結させるツールに、かさねを使ってるんだよ、って。
そんなものを使わないと成り立たない友情って、一体何なのだろう。
嫌がらせを受け初めてから、もう一年が過ぎた。
あたしにとって、彼女たちは異国の人よりも理解できない。
ため息を一つついて、昇降口の端に置かれたごみ箱に近づいた。
そこには案の定、一足のローファーが突っ込まれていた。
うわ、ジュース飲み残したまま捨てたの誰。
靴、汚れちゃってるじゃん。
紙パック入りのコーヒー牛乳がかかった靴を、しぶしぶ取り上げる。
捨てたい。
けど、これを履かなくちゃ、靴はない。
何しろ体育用のランニングシューズは先日彼女たちに捨てられて、
行方不明のままなのだ。
そうだ、あれ、返して欲しい。買いなおすのなんて、嫌だし。
ポケットに入れていたティッシュで仕方なく汚れを拭っていると、
嫌な笑い声が背中にかかった。
「うわ。きったなーい」
「ごみ箱あさるなんて、絶対無理ぃ」
いじめっこが現れた、か。気付かれないようにそっとため息をついて、あたしは後ろにいる集団を振り返った。
「何の用?」
「森瀬(もりせ)、何やってるの? 汚いなあ」
「ごみなんて、どうするの? もしかして、持って帰るとか」
「やだ、信じらんないし」
集団に個性はない。
みんな同じような顔。同じようなセリフ。
集団から外れたら、何もしなくなるのも同じ。
あたしは彼女たちの名前も覚えていない。だって、同じクラスということ以外、取り立てて接触がないのだ。
なのにどうして、向こうはあたしを嫌うのだろう。
嫌がらせを受けるに足る理由があるのなら、納得もできるのに。
空っぽの靴箱をぼんやり眺めていると、
遠くから忍びやかな笑い声が聞こえた。
多分、あたしをターゲットにしている集団。
高校生にもなって、子供じみた嫌がらせをして、本当に楽しいんだろうか。
莉亜が言ってたっけ。
彼女たちは仲間を団結させるツールに、かさねを使ってるんだよ、って。
そんなものを使わないと成り立たない友情って、一体何なのだろう。
嫌がらせを受け初めてから、もう一年が過ぎた。
あたしにとって、彼女たちは異国の人よりも理解できない。
ため息を一つついて、昇降口の端に置かれたごみ箱に近づいた。
そこには案の定、一足のローファーが突っ込まれていた。
うわ、ジュース飲み残したまま捨てたの誰。
靴、汚れちゃってるじゃん。
紙パック入りのコーヒー牛乳がかかった靴を、しぶしぶ取り上げる。
捨てたい。
けど、これを履かなくちゃ、靴はない。
何しろ体育用のランニングシューズは先日彼女たちに捨てられて、
行方不明のままなのだ。
そうだ、あれ、返して欲しい。買いなおすのなんて、嫌だし。
ポケットに入れていたティッシュで仕方なく汚れを拭っていると、
嫌な笑い声が背中にかかった。
「うわ。きったなーい」
「ごみ箱あさるなんて、絶対無理ぃ」
いじめっこが現れた、か。気付かれないようにそっとため息をついて、あたしは後ろにいる集団を振り返った。
「何の用?」
「森瀬(もりせ)、何やってるの? 汚いなあ」
「ごみなんて、どうするの? もしかして、持って帰るとか」
「やだ、信じらんないし」
集団に個性はない。
みんな同じような顔。同じようなセリフ。
集団から外れたら、何もしなくなるのも同じ。
あたしは彼女たちの名前も覚えていない。だって、同じクラスということ以外、取り立てて接触がないのだ。
なのにどうして、向こうはあたしを嫌うのだろう。
嫌がらせを受けるに足る理由があるのなら、納得もできるのに。