午睡は香を纏いて
ああ、莉亜(りあ)がいれば。
そしたら今のことも、『くだらないよね』と言葉にして流してしまえるのに。
風邪で休んだ、あたしの唯一の友達を思い、ため息をついた。
莉亜は、中学の頃からの大切な友達。あたしが辛いとき、
ずっと傍で支えてくれた人なのだ。
あたしが嫌がらせを受けているとき、いつも誰も助けてくれない。
関わらないように視線を逸らしたり、あざ笑う彼女たちに追従の笑いを浮かべたりするだけだ。
そんな時、莉亜だけは声をあげて庇ってくれる。
身を挺して攻撃を受けまいと守ってくれる。
そして、あたしと一緒に泣いてくれる。
と、制服のポケットに入れていた携帯が震えた。
莉亜かもしれない。
昼休みに具合を伺うメールを送っていたのを思い出した。
しかし慌てて取り出した携帯のディスプレイには、
『お母さん』の文字が表示されていた。
莉亜だったら、と持ち上がりかけた心が瞬時に沈む。
静かに震えて着信を知られるそれの通話ボタンを、ため息とともに押した。
「はい、もしもし」
『今晩帰らないから』
用件だけを告げる、感情のない声。
「……明日、は?」
『聞いてどうするの? 用事でもあるの』
「ない、けど……」
『なら、どうでもいいでしょう? お金はいつものところに置いてるから。じゃあね』
プツ、と一方的に通話は切れた。
無機質な通話の終了を知らせる音を、ぼんやりと聞いた。
新しい彼氏が出来ると、母は家に帰ってこなくなる。
気持ちが盛り上がっているところに、あたしの存在は邪魔なのだと、
はっきり言われたのは中学三年のことだっけ。
親にとって子供は無二の存在なのよ、と言った口から零れた言葉は、
しばらく受け入れることができなかった。
そしたら今のことも、『くだらないよね』と言葉にして流してしまえるのに。
風邪で休んだ、あたしの唯一の友達を思い、ため息をついた。
莉亜は、中学の頃からの大切な友達。あたしが辛いとき、
ずっと傍で支えてくれた人なのだ。
あたしが嫌がらせを受けているとき、いつも誰も助けてくれない。
関わらないように視線を逸らしたり、あざ笑う彼女たちに追従の笑いを浮かべたりするだけだ。
そんな時、莉亜だけは声をあげて庇ってくれる。
身を挺して攻撃を受けまいと守ってくれる。
そして、あたしと一緒に泣いてくれる。
と、制服のポケットに入れていた携帯が震えた。
莉亜かもしれない。
昼休みに具合を伺うメールを送っていたのを思い出した。
しかし慌てて取り出した携帯のディスプレイには、
『お母さん』の文字が表示されていた。
莉亜だったら、と持ち上がりかけた心が瞬時に沈む。
静かに震えて着信を知られるそれの通話ボタンを、ため息とともに押した。
「はい、もしもし」
『今晩帰らないから』
用件だけを告げる、感情のない声。
「……明日、は?」
『聞いてどうするの? 用事でもあるの』
「ない、けど……」
『なら、どうでもいいでしょう? お金はいつものところに置いてるから。じゃあね』
プツ、と一方的に通話は切れた。
無機質な通話の終了を知らせる音を、ぼんやりと聞いた。
新しい彼氏が出来ると、母は家に帰ってこなくなる。
気持ちが盛り上がっているところに、あたしの存在は邪魔なのだと、
はっきり言われたのは中学三年のことだっけ。
親にとって子供は無二の存在なのよ、と言った口から零れた言葉は、
しばらく受け入れることができなかった。