午睡は香を纏いて
ぐっすり寝たあとの目覚めは、瞼がぱち、と開く気がする。
子供のころに持っていた、お休み人形を抱き起こした時のように、
ぱか、と音がしそうなくらいの勢いで。

そんな風に目を開けたら、薄暗い部屋に寝ていた。
あれ、なんであたしは寝てたんだろう。
というか、見慣れない天井のここは、どこ?
横たわったまま、ぼんやりと周囲を見渡した。


「え」


真横、しかも至近距離に、レジィの寝顔があった。
くーかくーかと気持ちのよさそうな寝息をたてている。


「ええ」


何でレジィまでここで寝てるの?
レジィと一緒に寝ている経緯が分からない。

目の前の無防備な顔を、ついまじまじと見てしまった。
本物、なんだろうか。夢、だろうか?
いや、もし夢だとしたら、あたしの脳はどういう処理の末に、レジィと一緒に寝ている夢なんか見せるんだろう。

確認の為に、そろそろと指先で頬に触れてみた。
張りのある肌に、つん、と触れたかと思うと、んふーと大きく息を吐いた。それにびくりとしたあたしに気付いているわけではないのだろうけど、へへ、と笑うレジィ。

どうやらこの状況は、現実のようだ。


しばし、思考停止。


「……えええええっ!!!!」


叫んで、慌てて体を起こした。
そのまま、レジィから少し離れたところまで後ずさる。


「……んむ? あ、カサネ起きたんだ。つーか俺寝てた?」


ばたばたしたせいで、レジィを起こしてしまったらしい。瞬きを繰り返してから、ふあと欠伸をしながらレジィが言った。


「あ、あ、あの、あたし何で寝てたの?」


んん、と伸びをして、レジィは起き上がった。
片手で頭を掻きながら、もう一度欠伸をする。




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