午睡は香を纏いて
「カサネの様子を見に来て、そのままぼんやりしてたんだけど。
俺もいつのまにか寝ちゃったみたいだな。あー、よく寝た」

「様子? ええと」


混乱する。あたし、寝る前はどうしてたんだっけ。


「記憶があやふやなのか? カサネはあれから気を失うように寝ちまったんだ。
助けが来て、安心したんだろうな。
カインたちと話してたらさ、急にふにゃーって力が抜けたかと思ったら、寝息たててた。
無理をしたから、疲労が溜まってたんだと思う」


ああ。安心したのは、覚えてる。
ということは、あたしはあんな大勢の前で子供みたいな寝入り方をしたのか。
恥ずかしすぎる。
しかも、助けてもらっておいて失礼なことをしてしまったのでは。


「ご、ごめんね。起こしてくれてよかったのに」

「別にいいさ。全部終わったあとだったんだから、問題ねーよ」

「なら、いいんだけど。で、ここはどこなの?」

「あの場所から少し離れた場所に、陣を張ったんだ。ここはそのテントの一つ」

「テント?」


室内を見渡した。中心と周囲に木柱が立っていて、それを支えに布が張られているらしい。


「本当だ。暗くて分からなかった」

「もう夜みたいだしな。俺がここに来たときはまだ夕刻まで時間があったんだけど」


あたしの記憶では、朝日を眺めたはすだ。ということは、あたしは半日以上も眠っていたのか。


「レジィ、あたしこんなに長く寝ちゃってよかったの? 出発しなくていいの?」

「ああ。今日はここで休んで、明日の朝オルガに向けて出発するからさ。急がなくていいんだ」

「え? そんなことして、大丈夫なの?」


リレトが他にも追っ手をかけているかもしれないのに。そう言うと、あたしの前に座りなおしたレジィが首を横に振った。


「それはない。リレトはもう兵を出していないはずだから」




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