午睡は香を纏いて
やれやれ、と立ち上がって、カインさんはあたしを見下ろした。


「これからよろしく。俺のことはカインでいい。それと、その口調、堅苦しいのは止めてくれていいから」

「あ、はい。いや、ええと、うん」

「湯浴みの用意が出来てる。起き上がれるなら、使った方がいい。
レジェス、フーダが表で待ってるから、早く紹介してあげたほうがいいかも。じゃあ」


言い置いて、カインはすたすたとテントを出て行った。
ぱさりと閉じた出入り口を見つめる。

冷静な人、という表現でいいのだろうか。
飄々として、どことなくマイペース。表情は無に近くて、感情があまり窺えない。 

さっき、『サラとの共通点はない』と言ったときも、ただ事実を述べるような淡々とした様子だったし。

いや、違うのかもしれない。
レジィの話だと、カインもサラと親しかったはずだ。それならカインはあたしをどう思っただろう。やっぱり、落胆したのだろうか。
サラを知っているだろうリレトは、あたしを男と勘違いして『貧相な坊や』と言ったし、女だと気づいた時には、『かわいそう』とまで言った。
よほど、サラの容姿から劣化しているのだろう。

もしかしてそれにショックを受けすぎて、あんな風に感情が乏しくなってしまった、とか? 

うわ、そんなのあたしもショックだ。
見た目はどうしようもないことだし。


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