午睡は香を纏いて
「レジィ、カインって、普段からああいう感じ? いつもと様子が違ったりした?」


思わず聞いてしまった。


「ん? いつもより優しかったかな。嫌味がなかった」


え、あれで優しいの? 目を見開いたあたしにくすりと笑って、レジィは続けた。


「よくそんなに毒が吐けるなってくらい、いつもはキツいんだ。
神官ってのは性格がひねくれてないとなれないんじゃないか?
まあ、それでも結構いい奴だけどな」


最後に肩を竦めてみせたレジィの左腕に、包帯が巻かれているのに気付いた。


「あ! 腕、大丈夫なの!?」


そうだ。あの時斬りつけられていたじゃない。どうして今まで忘れていられたんだろう。

包帯の巻かれていない手首を掴んで聞いた。
灯りに照らして、ずい、と顔を覗きこめば、頬にも薄く傷が入っていた。


「ここも怪我してる! 他は?」


あたしを庇っていなかったら、怪我なんてしなかったかもしれない。見たところ平気そうにしているけど、体のどこかにまだ傷を抱えていたらどうしよう。


「ちょ、ちょっと、カサネ!?」


ぺたぺたとレジィの体を触る。
黒い上着を着ている体には、包帯を巻いたような違和感はないようだ。
袖を巻き上げて右腕も確認した。
案の定と言うべきか、二の腕には包帯が巻かれていた。その他にも小さな傷がいくつか目についた。


「ごめんなさい!」


こんなに沢山の傷を負わせてしまった。もしも残ってしまったらどうしよう。
あたしには一つもついていないのに。
身を挺して庇ってくれたのだ。あたしにつけられるはずの傷も、レジィが受けてくれたんだ。


「あ。背中。背中は!?」


背中を確認していなかった、と後ろに回り込んで服を捲りあげようとしたところを、止められた。


「ちょ、ちょっと待て。待って下さい」


首根っこを捕まえられて、ぐえ、と蛙が潰れたような声がでた。そのままレジィの正面に戻される。



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