午睡は香を纏いて
「よ、よろしく。でも、あの?」

「ああ、まだお顔も汚れてるじゃありませんか。
全く、ずっとお側についていたくせに、それくらい気をきかせられないもんかねえ」


あたしの顔を覗きこんで、呆れたように頬を指先で拭った。
その指先に黒ずんだものがつくのを見て、自分の顔が汚れていることに初めて気付いた。

どれくらい汚れてるんだろう。
手を頬にあてると、普段以上にがさがさしている。
油でもついているのか、べたべたした箇所もある。
はた、と体を見下ろせば、頼りない明りの下でも埃まみれで粉っぽいのが分かった。

しかも、どことなく臭う?


こんな状態でレジィやカインの前にいたのか、あたし。
それは、年頃の娘として恥ずべきところではないのか。
思わずフーダさんの手を握り返していた。


「すみません。すぐに連れて行って下さい」

「はい、すぐに参りましょうかね。長。こんなことじゃカサネ様に嫌われるよ」


フーダさんはあたしには笑顔を、レジィには冷ややかな一言を向けた。


「悪かったって」


レジィはどうもフーダさんには頭が上がらないらしい。
叱られた子供のように、ばつの悪い顔をしていた。


「じゃあ、行きましょうか」

「お願いします」


ごゆっくりー、と手を振るレジィに見送られて、テントを出た。



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