午睡は香を纏いて
「ああ、レジェスはオルガの邑の長なんだよ。
元々はレジェスの養父のロウム様が長だったんだけど、お亡くなりになってね。それで、残った邑人たちで話し合いをして、レジェスを新しい長にしたのさ。
あの子はまだ若いけど、邑を支えていける力を持っている、ってね。

だから本当なら、もっと敬った態度をとらないといけないんだろうけど、何しろあの子が寝小便垂れの頃から知っているからねえ。なかなか出来なくてね」


フーダさんはにや、と悪戯っぽく笑った。

そうか。レジィはやっぱり偉い人だったんだ。
あの安心感や力強さは、人の上に立つ人の持つものだったんだ。


「知らなかった。そうだ。ライラもレジェス様って呼んでたっけ……」

「ライラ? 忍人の、ゼフの娘のライラかい?」

「そうです。あたし、ライラにも助けられたんです、
って! ライラはあたしの代わりになったんです! どうしよう!!」


もっと早く気付かないといけなかったのに。
ライラはどうなっただろう。無事だろうか。
ヤシムスを離れた経緯をフーダさんに話した。


「身代わり、かい。きっと、大丈夫だと思うよ」


手を休めて話を聞いてくれていたフーダさんが、眉間を寄せながら言った。


「そう、でしょうか?」

「ああ。ゼフと言えばオルガでも指折りの戦士だよ。娘一人守れないような男じゃない。絶対に逃げ切っているさ」


断言するフーダさんに、ほ、とする。じゃあ、またライラに会える。


「さあさあ、話も大事だけど、今はこの湯が冷めないうちに使わなくちゃ。流すよ?」

「え、あ、ふびゃ!」


頭から勢いよくお湯をかけられた。




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