午睡は香を纏いて
「えい、脱いじゃえ」
べたべたして気持ち悪いし、いっそのこと、裸足で帰ろう。
あたしのことなんて、誰も見ていないんだから。
沈んだ気持ちごと乗せたつもりで、シミの残った靴から踵を抜き、空を蹴上げるようにして放った。
黒いローファーは宙を弧を描いて舞った。
「あ」
やりすぎた! と思った時にはすでに遅し。
すう、と予想外に飛んでいく靴。
それはごつんという音をたてて、人の頭に落ちた。
ああああああ! やっちゃった!
「す、すみませ……んっ!?」
駆け寄ろうとして、思わず足を止めた。
頭を押さえているのは男性だった。
その頭は、光を浴びてキラキラ光る、短めの金髪。
ついさっき、あたしを嘲笑していった集団とよく一緒にいる男たちが、いつもこんな髪の色をしている。
もしかして、彼らのうちの一人なんじゃ?
見れば、先に行ったはずの集団が一緒にいた。
どうやら間違いない、らしい……。
「うわ、森瀬じゃん」
「信じらんない。あのう、大丈夫ですかぁ?」
あたしに冷ややかな一瞥を寄越して、女たちは男に群がった。
「あの子、ちょっとおかしいんですよ」
「こんなきったない靴をぶつけてくるなんて、どうかしてるんじゃない?」
「あ、あの、ごめんなさい」
言われていることはさておき、この件に関してはあたしが全面的に悪い。
駆け寄って、深く頭を下げた。
ああ、今日は厄日、ってやつなのかもしれない。なにもかもが上手くいかない。
べたべたして気持ち悪いし、いっそのこと、裸足で帰ろう。
あたしのことなんて、誰も見ていないんだから。
沈んだ気持ちごと乗せたつもりで、シミの残った靴から踵を抜き、空を蹴上げるようにして放った。
黒いローファーは宙を弧を描いて舞った。
「あ」
やりすぎた! と思った時にはすでに遅し。
すう、と予想外に飛んでいく靴。
それはごつんという音をたてて、人の頭に落ちた。
ああああああ! やっちゃった!
「す、すみませ……んっ!?」
駆け寄ろうとして、思わず足を止めた。
頭を押さえているのは男性だった。
その頭は、光を浴びてキラキラ光る、短めの金髪。
ついさっき、あたしを嘲笑していった集団とよく一緒にいる男たちが、いつもこんな髪の色をしている。
もしかして、彼らのうちの一人なんじゃ?
見れば、先に行ったはずの集団が一緒にいた。
どうやら間違いない、らしい……。
「うわ、森瀬じゃん」
「信じらんない。あのう、大丈夫ですかぁ?」
あたしに冷ややかな一瞥を寄越して、女たちは男に群がった。
「あの子、ちょっとおかしいんですよ」
「こんなきったない靴をぶつけてくるなんて、どうかしてるんじゃない?」
「あ、あの、ごめんなさい」
言われていることはさておき、この件に関してはあたしが全面的に悪い。
駆け寄って、深く頭を下げた。
ああ、今日は厄日、ってやつなのかもしれない。なにもかもが上手くいかない。