午睡は香を纏いて
「え、ええとですね」

「はい、そこでおしまい」


我を失ったかのようなセルファさんの首根っこを、フーダさんが掴んだ。


「フーダ! 今大事なところなんだって」

「大事なのは、カサネの登場を待っている長たちの方。あんたは後回し」


ぶうぶうと文句を言うセルファさんを一蹴し、フーダさんはあたしの手を取った。


「皆、カサネの登場を待ってるから、行こうかね」

「待ってる、って?」

「長がね、夕餉の座で改めて皆にカサネを紹介したいって、待ってるのさ。
これ以上待たせたら奴ら、ひもじさに喧嘩をおっぱじめちまう。さあ、おいで」

「あ、はい。あの、セルファさん、ありがとうございました」

「はいよ。お礼がしたいなら、また話聞かせてくれるよね?」

「はいっ」


ぶう、と膨れたセルファさんに頭を下げた。



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