紅蒼ノ魔女(仮)
なんだ、今のは?


そうだ、空気が変わった。


行かなくちゃ、そう思うのに身体が動かない。



「カイヒ、お前は何者だ?」



魔女なのか?


そう聞かれたわけではないのに、ものすごく焦っている。


動揺してしまっている。


ふぅっと落ち着かせて、慎重に口を開いた。



「僕は僕だよ。

ただの人。」


「そういうことではない。

お前は俺に隠していることがある。」



気付かれている?


でも絶対に話してはいけない。



「お前は……!!」


「ゴメン、疲れたから部屋戻る。」



あからさまに逃げたことはわかっている。


だけど頭が働かなかった。



「言えないんだよ、危険なんだから。」



それくらい察せないと、いい男にはなれないぞー。


心の中で笑えたが、笑顔は出せなかった。



_________
___________


「何よ、2日連続で。

こっちも忙しいんだけど。」



戦争から身を守る準備をしているんだから。


ぶつぶつ呟いているトラ。


だがそんなのは気にしない。



「君の知る真実を話して、トラ。」



呟きが止まった。



「…昨日話したことが全部よ。

それが用?

なら帰るわ。」



昨日の僕に劣らないほどのわかりやすさ。


だけど逃がしはしない。



「シェト、ミィハ。」



トラは歩みを止めた。


こちらを見はしないが。


サイリとの出来事を忘れるように、この2人について僕はよく考えた。


頭の引き出しを開けては閉め、それを繰り返して名前を探した。


だけど見つからない。


諦めようとした時。


僕は自分を心から大馬鹿者だと思った。


本当に、何故気付かなかったのか。


いや、気にしなかったのか。



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