紅蒼ノ魔女(仮)
トラは声を出さずに頷いた。



「…復讐が始まるわ。

魔女達による人間に対しての復讐が。」



それが戦争。


狙いは魔女ではない。


人間だ。



「どうして今なの?」


「夫婦にさせないつもりなのよ。

サイリと、あの娘を。」



結婚して幸せだったはずのミィハとシェトを襲った不幸。


お返しは幸せさえも与えない不幸って訳か。



「正直人間がどうなってもいいという気持ちもある。

だけど、あの方達ならそんなことはしないと思うから。」



ここまで僕の両親を慕ってくれているトラ。


放っておくわけにはいかないよね。



「戦争を始める前に止めることは不可能だよ。」


「……」


「でも始まってからなら止めてあげるよ。」



俯いていた顔をあげたトラ。



「直接魔女達に聞きたいこともあるしね。」



それに、どんな暗い事情があったって。


僕の性格からしてそのままにしておくわけがないじゃないか。



「面白くなるよ、きっと。」



そのために抵抗なく命を張ろう。


死ぬつもりはないけどね。




_________
___________


かっこよく決めたはいいが…


何をすればいいんだ?


戦争を止める、なんて簡単に考えていたが、今のままじゃ無理だ。


修行でもするか。


魔銃を出して構える。


それを落ちてくる葉をめがけて発砲した。


夫婦にならせないことが目的なら、結婚式を潰すということだ。


なら式場が確実に狙われる。


その前に止めることがミッションかな。


でも僕も結婚式が潰れた方がいいんだよね。


リーシィもその方が喜びそうだし。


僕も…


僕も、なんだ?


よくわからない感情が走ってしまい、弾が外れた。




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