紅蒼ノ魔女(仮)
「カイヒ。」


「トラじゃないか。

久しぶり。」


「別れたのはさっきだけどね。」



ちょこちょこと短い脚を動かして近付いてくる。



「あの蒼魔女と知り合いだったのね。」


「前にちょっとね。」


「大丈夫?」



やっぱり今日のトラはおかしい。


大丈夫だって言っているのにな。



「心配しすぎ。

随分と時間をくっちゃった。

行こう。」



草原まであと少し。




_________
___________


「なんでカイヒは帰ってこないのかしらっ!?」



カイヒが出て行ってから2日たった。


つまり今日は弟のサイリの結婚式で。


私のイライラは絶好調な訳。


更にカイヒが帰ってこないという事態にもイライラが募る。



「何してるのよ、あの子は…!!」



カイヒと出会ってからまだあまり日はたっていない。


だけど一緒に過ごしてきたこの短い時間で彼女のことを知り、大切な存在となっていた。


妹のような存在。


面白いことのためならば、なんでもしてしまう彼女。


そんな彼女は見ていてとても危なっかしくて。


でもそんな彼女にも好きな人ができて。


自分のことを僕、なんていうからそういうことには興味がないのかもしれないとも思っていたけれど。


好きな人のことを話す彼女はやはり女の子だった。


異世界から来たとか、実は魔女だとか、そんなことは本当にどうでも良かった。


ただ大切だった。


いえ、今でも大切だけれど。


戦争に行く前に一度帰ってくると言っていたのに。


はぁ、と溜め息をついた。


きっとあの子は私がこんなことを思っているなんて考えてもいないんでしょうね。


そう思ったらなんだか悲しくなってきた。


私は騙されたのね。


そのまま行くならそれはそれで言って欲しかったのに。


あの子にしては隠すのがうまかったわね。



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