紅蒼ノ魔女(仮)
ただ銃から弾が放たれることはなかった。



「あらら、カッコいいところは横取りかな。」



微笑みながら声をかける。



「ズルいぞ、クル。」



守ってくれた。


クルもまた、自ら選んだのだ。



「カッコつけたいとか思ってもいないくせに何言ってんだよ。

それに、その呼び方のせいで台無しだ。」


「まぁね。

でも呼び方のせいにしちゃいけないよ。

ちゃんと可愛いんだから。」


「今、可愛いって言ったよな!?」


「そんなことないよ。

カッコいいカッコいい。」



のんきなものだと思う。


戦いの中、さっきから話してばかりだ。


だけど、嬉しいんだ。


僕と一緒に戦ってくれる人がいることが。


僕の守るべき人が増えていくことに対しては不安だらけだ。


それでも、共にあることが心強い。


すごく、嬉しい。



「何故なのですか、蒼魔女様!?」



声を荒げたのはさっきまで倒れていたレオラ。


セオを慕う数人の橙魔女が暴れているレオラをおさえつけている。


蒼魔者のクルは本来なら味方のはず。


いや、味方という表現はおかしいのかもしれない。


初めから決められている、守るべき者だ。


その人物が自分の放った攻撃から紅魔女と橙魔女の頂を守った。


叫びたくなるのも無理はない。



「俺はただ当然のように頂に従ってきた。

よく考えずに、紅魔女と橙魔女を敵として戦ってきた。」


「それがっ、それが…!」


「『当然』だったよな。

だがそれは違ってたんだよ。

カイヒに言われて考えた。

俺の戦う意味みたいなものをさ。」



クルは一度黙って俯いた。


そして、静かに顔をあげた。


そのクルの表情は苦しそうだった。



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