紅蒼ノ魔女(仮)
心を読まれた。


僕はそんなにヒドいことはしていないのに。



「カイヒ様、行って下さい。

貴方にはやるべきことがあります。」


「セオ…」



大丈夫。


この子達なら負けはしない。


きっとこの場をおさめてくれる。


傷付く辛さを知っているのだから。



「ごめん、後はまかせた。

いってくる。」


「はい、いってらっしゃい。」



セオの微笑みに送り出され、僕は教会へと向かった。


多分、セオは気付いていたんだ。


だから僕の言葉に同じように返してくれたんだと思う。


僕は行く。


そして、頂を止めて…


今度こそ、言ってくるから。


僕の大切な人に。




_________
___________


「まだ始まらないの!?

鐘はとっくに鳴ったはずよ!!」



シュリアがキーキー喚いている。


正直耳が痛いわ。



「何かトラブルがあったみたいよ。」



苛立ちを隠さないシュリアに言う。


準備はすでに整っている。


しかし式は始まらない。


トラブル、それはもちろん魔女の戦争のことだ。


やはり起きてしまったようだ。


結婚式を取りやめるかどうか、今話し合いをしている。


どうにか、取りやめてほしい。


私自身のためではなく、サイリと…あの子のために。


「私は、早くサイリ様と愛を誓いあいたいのよ!!」



何も知らないシュリアはただただ騒ぎ続けている。


はぁ。


白いドレスはとても綺麗なのに、何故こんなに汚れて見えるのか。


ドレスがかわいそうだ。


コンコンッ


控え室のドアを叩く音が響いた。



「お待たせいたしました。

30分後に式を始めます。」



どうやら、ダメだったみたいだわ。


目の前にいる彼女が幸せになるか、サイリとあの子が幸せになるか。


はやく来なさい、カイヒ。



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