紅蒼ノ魔女(仮)
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「精一杯走っているのに、全然速くない気がするよ。」



セオ達にあの場を任せてから大分走ったと思う。


なのに、道のほとんどが登り坂で進んでいる気がしない。


気持ちは前に向かっているのに、足がそれについていけてないのだ。



「むず痒い…」



なんとか速くできないか、と考えながらも足を動かし続ける。



「カイヒ!」


「トラ!

一体今までどこにいたんだ?」


「教会の方に行っていたのよ。

…私が着いた時にはまだ頂達は来ていなかったわ。

だけどさすがにもう…」



着いているって訳か。


くそっ、もっとスピードを出せ。


速く、速く。


守りたい、大切な人達がいるあの場所へと。


ただひたすらに前だけを見て走った。




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コンコンッ


「はい。」


「大変長らくお待たせ致しました。

式場の方へお願い致します。」


「…わかりました。」



嫌な気持ちを表情に出さないように、重たい腰をあげる。


トラブルがあったならそのまま潰れてくれれば良かったと思う。


それに何故だろうか。


トラブルの内容は明らかにされていないようだ。


つまりは…



「魔女絡みってことか。」



もしかしてあいつも…?


いや、それはないだろう。


ないと願いたい。


あいつと敵対なんかはしたくない。



「サイリ様!」



真っ白なドレスを着て俺に向かってくる。



「シュリア。」


「やっとですわ!

やっと私達の愛を誓えるのですね!!」



お前と愛を誓う気はない。


そう言いたい気持ちを我慢する。


今ここで言ってはダメだ。


シュリアの言ったことは無視し、式場に向かった。



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