紅蒼ノ魔女(仮)
「早くかえてきて!」


「はいっ!」



メイドさんは焦りながら走って行ってしまった。


…昨日見た恋する乙女なシュリアは幻だったのかな。



「あぁ、もうイライラするわっ!」



一瞬でも、泣くのかな、なんて思った自分が馬鹿みたいだ。


彼女はきっと何かに八つ当たりしたんだろう。


今の姿を見ればそうとしか思えない。


それはまぁいいとして。


シュリアは部屋に入らないのかな。


書庫に行くにはここを通らないといけないんだよな。


あんなにイライラしているシュリアに突っかかれるのは面倒だ。


でもこのまま部屋に入るのをここで待っているのもな…



「行くか。」



しょうがなく歩き出した。


見つからないようには、行けないよね。


廊下の壁に寄りかかっているシュリア。


後ろを通ることは不可能だ。


はぁ、と溜め息をつくとこちらに気付いたようだ。



「あら貴方…

こんなところで何をやっているのかしら?」



なんだっていいじゃん、という言葉を飲み込み笑顔で答えた。



「…書庫に向かおうとしています。

調べ物をしたくて。」


「ふーん、そうなの。」



そこまで興味がないなら聞くなよ。



「本来ならここは、貴方みたいな人がいれる場所ではないのよ。

あまり、自由に歩き回らないでくれるかしら?」


「しかし、僕はリーシィに許可をもらっていますから。

それにここは貴方の城ではないですよね。

貴方の言うことに従う必要はないと思いますが。」



と返答をした。


やっぱり僕には黙っていることはできないみたいだ。


また怒らせてしまった。



「私はサイリ様の婚約者よ!

私の言うことを聞くのは当然でしょう!」


「しかし、まだ全員には認められてはいないんですよね?」



リーシィは猛反対していた。


賛成するつもりはまったくないみたいだし。



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