紅蒼ノ魔女(仮)
「リーシィは気付いてたんだ。」


「えぇ。

でも何か事情があるのかと思っていたわ。

何も言わないから。」



わざわざ突っ込まないでいてくれたんだ。


少し悪いことをしてしまったかも。



「元はといえばこっちの者じゃないからね。

それが関係してるんじゃないかなって僕は思ってる。」


「そう。」



茶色のままなのは不思議だけど、紅色の瞳って怖くないのかな?


吸血鬼、みたいな。


血を吸われるーって感じ。


まぁ僕は吸う前に身体中から血を出したけど。



「リーシィは魔女に会ったことあるの?」


「一応ね。

弟が助けられた時、私もいたから。」


「何色だった?」


「確か紅だったわよ。

綺麗な方だったわ。」



リーシィにこんなこと言わせるなんてよっぽどの魔女だったんだな。



「その魔女の紅色の瞳ってどんな感じだった?」


「優しい瞳をしていたわ。

恐怖をまったく感じさせない瞳。

人間にも敵対心をまったく向けていなかった。」



全ての魔女がそんなふうだったら戦いなんておきなくてすむのに。


リーシィはなんとか聞こえる大きさで言った。


僕にはその言葉がしっかり届いていたけど。



「人間だって同じだよ。」



逆に僕の小さな呟きはリーシィには届かなかったようだ。


魔女だけじゃない。


人間にだって悪い部分はある。


あの戦争について人間が伝えていったことには、間違いがあるかもしれないんだ。



「じゃあ僕は部屋に戻るよ。

使った分の魔力は回復しておかないと。

いつ敵がやってくるかわからないし。」



僕のことを知っている魔女がいるかどうかもわからないけどね。



「そんなことはないようにしたいわね。

まぁゆっくり休みなさい。」



そうしてリーシィと別れた。



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