紅蒼ノ魔女(仮)
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とある者が森の中で話していた。


ただ、周りに誰かがいる様子はない。



「聞こえているか、シナ、ユラハ?」


『聞こえています、セオリー様。』


『同じくー!』



目を閉じ話しているセオリーはここにはいない二人と通信をしているようだ。



「あとどれくらいで着く?」


『もう少しです。』


『ねぇねぇ、セオリー様ー?

普通に話してるけど魔力でバレたりしないのー?』



魔力は空気の流れに微かに変化を与える。


気付く人には簡単にわかってしまうだろう。



「大丈夫だ。

力はかなり抑えてつかっている。」


『ならいいんですけどー。』


『ユラハ、その語尾をのばすのはなんとかならないのですか?』


『えー?

わたしの個性を否定するのー?』


『そういう訳ではありませんが…』



ぶーぶー言うユラハを困った目で見るシナ。


その様子がセオリーにも伝わってくる。



「あまり大きな動きはしないこと。

私だけじゃなくてお前達も気をつけなくてはダメだ。」


『はい。』


『わかってるよー。』



はっきりとした返事と本当にわかっているのか不安になる返事がくる。


“今”のユラハではやっていけない。


やはりこれからもシナと行動させるべきか。


セオリーは考えていた。



「では、通信を切る。」


『セオリー様、待って。』


『ユラハ?』



ただ事ではない雰囲気が漂う。



「どうした?」


『…人間がいるよ。』



冷たい声で、その人間に冷たい視線を向け言うユラハ。



『セオリー様、一応とらえます。』


「わかった。

くれぐれも気をつけて。」



そのあと返事は来ることなく、通信が切れた。



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