紅蒼ノ魔女(仮)
おかしい。


いつもだったらこちらが先に切るのに。


見つけた人間に気をとられて切断してしまったのかもしれない。



「…あとでしごかなければ。」



今日は気温が高いのにも関わらず、セオリーは太陽に当たりながらもちっとも汗をかいていなかった。


暑いどころか涼しそうな表情にも見える。


だけどやっぱり暑かったのか日陰に移動した。



「シナ達が遅い。」



あと少しと言ったらほんの数分でこれる距離にいたはずだ。


やっぱり何かあったのかもしれない。


そう思って探しに行こうとした。


だけどそれを誰かの声に止められた。



「お前は…!」




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「いやー、油断したよ。」



後ろをとられた時は危ないと思ったね。


にっこりと笑いながら緑に音をたてさせて出てくる。


気絶した女性を引きずって。



「人二人は僕にはきつかったよ。」



ある程度の距離を保ちながら驚いている女性に近付いていく。



「ねぇ、橙魔女さん?

いや、城の新人メイドさん、とでも言っとく?」


「ッ!

何故それを…!」



ここで僕はやっぱり、とか言ってみるときっとベタな展開がやってくるんだ。


カマをかけたのか、ってね。


そんなのは面白くない。



「簡単、簡単。

気配って結構わかりやすいんだよ?

隠そうとしたってだいたいの人はどこかしらから漏れる気配でバレてしまう。」



空気から伝わってくる感じが前にメイドさんと話していた時と似ていたんだ。


こういうふうに気付く人は多くはないけどね。


でも僕は小さい頃から人一人の違いを感じ、区別できるようにしていたからわかったんだ。


それに、



「橙のドレスを持っていたからもしかしたらって思ったのもある。」



彼女の髪を指しながら言う。


彼女は自分の髪を触り、まばたきをした。



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