紅蒼ノ魔女(仮)
書庫を出て大広間に向かう。


案内はもちろんセオだ。



「思えばセオはシュリアに色々やってたよね。

大丈夫だった?」


「はい。

カイヒ様もおわかりの通り、シュリア…様はサイリ様に夢中でしたから。」



セオに嫌味を言う暇があったらサイリにくっついていたいって訳か。


本当に乙女な心をお持ちだな。


僕にはわからない気持ちだよ。



「カイヒ様もシュリア様を好きではないんですよね?」


「そうだね。

でもなんていうか、どうでもいいだけかも。」



時々面白いって思うこともあるけどね。



「この辺りの国ではこの歳で結婚って普通なの?」


「そうとも言えませんが王族にはよくあることですよ、政略結婚なんて。」



自由に恋愛ができない世の中、初めて見たよ。


まぁ日本でもどこかしらではあるんだろうけど、僕はそんな環境にはいなかったからね。


ただの学生だったから。



「…カイヒ様。」


「セオ?

どうかした?」


セオがいきなり立ち止まり、僕も足を止めた。


そこで僕は気が付いた。


空気がガラリとかわったことに。


だが。



「カイヒ様!」



セオが叫んだと同時に窓ガラスが割れる音がして。


破片が飛び散ると共に渦のようになった炎が城の中に入ってきた。


ただ目を見開いて避けることのできなかった僕に、炎は直撃した。


直撃する直前。


あーあ、やっぱり僕は強くないんだなぁ。


なんて考えていて、自分の行動に笑っていた。


それと。


死にませんようにってね。



_________
___________


「カイヒ様、カイヒ様!」



炎が直撃してしまい、倒れたカイヒ様。


守ることができなかった。


攻撃がくることはわかっていたのに、動けなかった。


カイヒ様は多くの傷を負って目を閉じている。


だがまだしっかりと脈がある。



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