紅蒼ノ魔女(仮)
「誰だっ!」



割れた窓から外に向かって叫ぶ。


すると、上から女がおりてきた。


翠色の髪と瞳を持つ、魔女が。


それは以前見たことのある顔。



「人間に仕えるなど、随分とも堕ちたものですね、セオリー。」


「レオラ・シャイノ…!」



突然襲いかかってきた彼女は見た目は幼いが、実力のある魔女。


翠魔女の頂ではないがそれに近い者で、蒼魔女も信頼を寄せているという相手だ。



「敵とはいえ同じ魔女。

戦う気はありませんでしたが、人間と行動する魔女を放っておく訳にはいきません。」



レオラはさっきからカイヒ様を人間だと言っている。


紅魔女だということはバレていないようだ。


ならばこのまま話を合わせておこう。



「彼女はクリフィナ国の姫の友人だ。

情報を集める為にそばにいるだけだ。」


「本当にそうなのでしょうか?」



疑われるのは当然だ。


だがカイヒ様は傷を負っている。


さっさと帰ってもらわなければ。



「…貴方は人間を消すことに賛成していないとのことです。

魔女を裏切っていてもおかしくはないのです。」



わかっている。


これが挑発だということは。


それにのってはいけないということも。


カイヒ様の治療を早くしなくてはならない。


レオラに構っている暇はない。



「勝手に言っていればいい。

私はもう行く。」



カイヒ様をそっと持ち上げる。


そして歩き出そうとしたが。



「…紅魔女がダメなのですから、橙魔女がダメなのも当然のことですね。」



この言葉をきいて足を止めた。


…申し訳ありません、カイヒ様。


後で罰はしっかりと受けます。


持ち上げたカイヒ様を再び床におろす。


相変わらず目は開かない。



「カイヒ様。

すぐに終わらせます。」



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