紅蒼ノ魔女(仮)
「火には水、単純な考えなのです。」


「それだけでこの魔法を選んだわけではない。」



地を蹴り、一歩で距離を縮めレオラの前へと飛ぶ。


そして剣をふるった。


レオラに当たりはしたが傷はついていない。



「そんなものですか?」


「いや、まだまだだ。」



馬鹿にするような笑みに私はニヤリと微笑んで返した。


それと共に先程当たった場所から水が溢れ出して来た。


その水は少しずつレオラを包み込もうとしていく。



「!?

これはっ!」


「私には時間がない。

さっさと溺れてもらおうか。」



なんとか水を抜け出そうともがくが、その気持ちとは反対に水の中に捕らわれていく。


終わったな、とカイヒ様を見るとまだ目を覚ましていなかった。


一瞬表情を歪めてから今度は周りを見渡した。


もの凄く、ではないが、所々が崩れている。


きっとレオラの真炎だろう。


微かに黒く焦げているところもある。


水浸しの床はあとでふいておくべきか…。


いや、それはいいんだった。


シュリアの城だから別に構わない、とも思うがやはり報告はしないとだめだろうな。


いずれにしてもカイヒ様が起きてから決めよう。



「敵に背中を向けるなんて、やはり貴方は駄目な魔女なのです。」



はっと後ろを振り返り、まだしまっていなかった魔剣で攻撃をはじく。



「反射神経は良いみたいですが。」


「抜け出せたのか。」


「そこまで柔ではないのです。

私の精神は。」


「そうみたいだな。」



さっきまで水に濡れていたはずのレオラの身体には、雫一滴も流れてはいない。


レオラははぁ、と溜め息をついた。



「貴方は甘々なのです。

自分の魔力を大幅に削って『幻』を使うなんて。」


「………」


「私を消したくはない、といった考えなのですか?

だとしたら迷惑なのです。

本気できてもらわないと。」



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