紅蒼ノ魔女(仮)
「いや、それはよくは知らん…ってだから何故…

いいや、どうせ無視されんだろうし。」



よくわかっていらっしゃる。



「戦争を起こす理由ってのは蒼と紅の頂しか知らねーんだよ。

なんどもきいてみてはいるんだが、教えてくれなくてな。」


「仲間なのに?」


「…俺達は上下関係が厳しいからな。」



上下関係を特別気にしているのはセオだけではなかった。


いや、クルは違うかもしれない。


気にしたくなくても、気にせざるおえないんだ。


でないと、自分の命に関わるのだろう。



「なんとも不便な決まりだね。」


「俺もそう思うよ。」



クルは苦笑いをしていた。



「集団から、抜け出そうとは思わないの?」


「思ったこともある。

だけど人間に嫌われている身だ。

行く当てがない。」



様々な場所を渡り歩って過ごせば、魔女に見つかりかねない。


だが、人間のところに行けば待っているのは死だろう。



「大変なんだね、魔女も。」


「そんなこと言ってくれるのはお前くらいさ。」


「…そもそも何故人間と魔女っていうのは仲が悪くなったのかな?」


「人間が悪い、と魔女達は言っているが、それは人間も同じだろう?」



確かに、人間は魔女が悪いと本に書いてあった。



「全て。」


「え?」


「全て、詳しいことは誰もわからないんだよ。

…頂以外な。」



本当によくそんな頂についていけるな、と感心する。


僕だったら自分の命に危険がふりかかっても、反抗してしまうだろう。


もし、僕みたいな人が沢山いたら今回みたいなことは起こらなかったのだろうか?


いや、関係ないか。


これは魔女族どうしの戦争で、上下関係というものは関係ないのだから。


蒼につく翠、紅につく橙。


更にその種族の中にある上下関係。


まったく、僕以上に馬鹿みたいじゃないか。


捕らわれることなんてないんだ。


誰も人の命は操れないのだから。



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