【番外編更新中】鬱気味お嬢様の甘い諸事情。
▼退屈な帰宅
「先生、早退します」
「あらそう? なら、担任の先生に伝えとくわね」
保健室の校医に一言告げる。
私は、一礼して保健室のドアを閉めた。
すると、壁に寄りかかるように立つレイが目に入った。
私に気が付くと、髪をさらりと揺らして寂しそうに呟く。
「しゅりりん、帰っちゃうの?」
「えぇ、帰るわ」
『ごめんね』と付け足せば、自分の言ったことに恥ずかしくなった。
いつものたてまえかもしれないのに…
私ったらどうして……?
「ごきげんよう」
その場にいるのが、怖かった。恥ずかしかった。
もしかしたら、レイはそんな友達面をする私を心の中で笑っているのかもしれない。
逃げるように、校内を後にして考えないようにしながら校門を目指す。
広々とした校庭の端に立つ立派な校門の前には、見慣れた車があった。
「お嬢様」
車を置いたまま、小走りで私のところに来る零の姿が目に入る。
零を見た瞬間。
ほっとして、力が抜けるような感覚になった。