四王寺学園記
コトン、とテーブルにコーヒーが入ったカップが置かれる。
「「ありがとうございます。」」
「いーえ。それじゃ、この学園と寮についてザッと説明するね。
まず、寮からな。
一階にコンビニがある。欲しいものは大体ここで揃うと思うよ。ジムとかも一階な。二階はお風呂と食堂、三階からが皆の部屋や。
君らの部屋は…えっと北原ちゃんが5270号室で、前野ちゃんが3250号室やな。
で…、申し訳ないんやけど北原ちゃんが男の子と同室になっちゃうんやけど…。」
「え、「ええっ!?」」
「すまんなぁ。でもここしか部屋が空いてなくて…。…イヤ?」
「い、…(寮長が!めっちゃウルウルした目で見つめてくる…!!こ、ことわれない…。)い、いいですよ。」
「ほんま!?よかった~。」
薫が横目で大丈夫なの?と言ってくる。
「(だって、断れなかったんだもん……。ウルウル攻撃には勝てないよ…。)」
「北原ちゃん、心配せんでもそない悪い子やないで。」
「そ、そうなんですか。」
その後も寮長は何やら説明してくれたのだが、楓の耳には全く入ってこなかった。
「楓?行くよ?」
「ハッ!う、うん。」
「安藤さん、ありがとうございました。コーヒー美味しかったです。」
「ほんま~?飲みたくなったらいつでも来てね。北原ちゃんと前野ちゃんだったら歓迎するよ~。」
「ありがとうございます!さようなら。」
「ばいば~い。」
楓達に声をかけてきた時と同じように寮長はドアから体を半分出して見送ってくれた。