四王寺学園記
2人がびくびくしながら部屋に入ると、20代後半だろうと思われる男が柔らかそうな笑みを浮かべ歓迎してくれた。
「はじめまして。この学園の理事長の四王寺靖弘(やすひろ)です。よろしくね。」
「こちらこそ、「よろしくお願いします。」」
「2人は噂通り、仲がいいんだね。」
「は、はぃ…。」
理事長と言えば厳格なお爺さんが頭に浮かぶ。しかしこの理事長は…芸能人よりも顔が整っている。モデル顔負けのスタイル、そして茶色の目と髪。どれもがこの人物を引き立てているようだ。
「ではあらためまして、北原楓君、前野薫君、入学おめでとう。噂には聞いていると思うけどこの学園に外部生はほとんどいない。最近はあんまり入ってこなくてね…。6年前に1人かな?この通り辺鄙な場所だから来たがる子も少なくて…、だから2人が入ってきてくれて嬉しいよ。
他の学校とはまた違う所があるから、慣れるのに大変だと思うんだけど頑張ってね。」
「はい!大丈夫です、理事長!私達もうこの学園が気に入っているので。ね、楓。」
「うん!」
「そう言ってくれると嬉しいな。ありがとう。」
「理事長、そろそろお時間が。」
秘書だと思われる女性が理事長の耳元でそう言った。
「え。もうそんな時間?
ごめん、楓君、薫君。後の詳しいことは寮長に聞いてもらっていいかな。涼君案内おねがい!あぁぁもっとお話ししたかったよ…。」
「何をぐずぐずしているんです。いきますよ。」
「うわあぁぁぁ。またお話ししようね~。楽しかったよぉ~。」
理事長はずるずると女性に引っ張られていく。
「「さ、さようなら…。」」