金星

一瞬、タケルがあたしの方を振り向く。


「ってかあんなことになってるなら早く言うんだよ!

たまたまあそこに俺らがいたから良かったけどさー!」


と言って、すぐに棚の方へ視線を戻した。


金髪とヘアバンドでほとんど隠れてるはずの耳が、

少し赤くなってるような気がした。


「カットバンあったあったー。それにしてもヨシヤっちまだ来ないのかな~?

さっき電話したんだけど出なくって」


絆創膏を片手にタケルが戻ってきた。


「そういえばさー、潤一も何か言ってたけど、優奈ちゃん、ヨシヤっちと上手くいってないの?」


あたしの肘に絆創膏を貼りながら、

タケルは心配そうな目であたしを見た。


「えー、そんなことないよ! ラブラブだよ!」
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