金星

ここまで言って、あたしははっと我に返った。


ヨシヤの顔。


いつもは目を細くして笑ってくれるのに。


長い前髪からのぞく、

あたしを見るその目は、いつもと違う細められ方をしている。


まるで、可愛そうなものを見ているよう。


「優奈、落ち着いて。そろそろ俺行かなきゃいけないからさ。

じゃあ帰り道、気をつけろよ~」


そう言って、ヨシヤはいつも通り、

あたしの頭をくしゃくしゃと撫でた。


ヨシヤはいつもと変わらないのかな?


けど何であたしはこんなに不安なんだろう。
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