金星
亜季の家の近くの狭い公園。

アズミも連れていった。


「そうなんだ……、潤一はちゃんと好きな人見つかったんだね」


錆びかけのブランコをこぎながら亜季は言った。


「アズミちゃんだっけ?

この前は突き飛ばしちゃってごめんね」


「……いいえ」


そう言った亜季の横顔の美しさに

アズミは驚いているようだ。


「これ以上アズミを危険な目に合わせたら俺が許さないから」



ブランコが揺れる乾いた音が、

周りのマンションにはじかれて戻ってくる。


あたりは暗くなりかけていた。

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