金星
「うわっ、あいつ今日もマジブリってるし! きしょーい」
「どーせあいつ高校デビューでしょ? ってかあの男マジ格好良くね?」
その女たちはすれ違いざまに、
そう言った気がした。
アズミに向かって。
そして、その女たちは再び人の群れの中へ消えてしまった。
「……」
思わず、俺はアズミを見つめた。
20センチくらいの距離。
目が合う。
しかし、すぐアズミは逃げるように俺から目をそらした。
まわりの騒がしい話し声や足音、車の音。
全てが一瞬、聞こえなくなった気がした。