金星

「……潤ちゃん、やっぱ今日ここでいいよ!

雨降りそうだし早く帰りなよぉ~」


そう言ってアズミは、自分から腕をほどいた。

いつもの口調なんだけど、何かが違う。


「じゃあ、またね~」


「おい、待てよ」

もう一度その腕をつかもうとしたが、

点滅する青信号の方向へ、アズミは走って去ってしまった。


それから、しばらくアズミから連絡はなかった。


何となく俺からメールもしてやったが、

返信もなかった。



――なんだよ、あいつ!

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