金星

ってか……誤解してるようだけど、

あたしは違うよ?

潤一なんかと関係ないし~!


と、その女の子に向かって、あたしは目で訴えた。


その時、


「……っ、あいつ!」


と呟いて、潤一が席から立ち上がった。


しかし、その瞬間、その女の子は走って去ってしまって、

人ごみの中に埋もれて見えなくなった。


立ち上がって呆然としている潤一。


「潤一?」


思わずあたしは潤一を見た。


「いや……何でもねーよ、ごめん」


「知り合い? 追いかけなくていいの?」


「あー、いいよ」


平常心を保っているように見せているけど、

潤一の目はあたしと合うことはなかった。


珍しいな、潤一が女のことで感情乱れてるの。
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