金星
「ごめん、ここから自動販売機のあたり、見えちゃったんだけどさ」
「あーあはは! ちょっとね~!」
「……俺でよかったらまた何でも聞くよ。
辛いことはためちゃだめだよ」
いつも笑ってばっかのタケルなのに、
珍しく真剣な顔――。
「えぇ~? 何もないよー!」
だめだ、ここでタケルの優しさに甘えたら、
また涙があふれだしちゃう。
「……」
タケルはあたしから視線をそらさない。
教室の窓の外は、少し曇りがかった空で、
今にも雨が降りそうだった。
「タケル、あたし、またフられちゃった……」
その景色を見ていたら、
思わず口から言葉が出てきた。